2024年4月1日から「相続登記の義務化」が施行され、2025年には本格的な運用が始まります。この制度改正は、不動産に関する大きな変革の一つであり、すべての不動産所有者や相続人にとって重要な影響を与えるものです。本コラムでは、相続登記義務化の背景や具体的な制度内容、影響、そして不動産投資家や一般の方が取るべき対応について詳しく解説します。

相続登記義務化とは？

これまでは、不動産を相続しても「相続登記」は任意であり、登記しないまま放置するケースが多く存在しました。その結果、所有者不明土地の増加が深刻な社会問題となり、公共事業の妨げや土地の有効活用ができない事態が全国で発生していました。

これを受けて、2021年の不動産登記法改正により、相続登記が義務化されることが決定し、2024年4月から施行されました。これにより、相続発生後、一定期間内（3年以内）に登記を行わなかった場合、過料（最大10万円）が科されることとなります。

相続登記義務化の背景

所有者不明土地問題

国土交通省の調査によると、全国の所有者不明土地は九州の面積を超えるとも言われています。このまま放置すれば、2040年には日本の約20％の土地が所有者不明になるという推計もあります。

社会的・経済的損失

• 公共事業の遅延や中止
• 災害時の復旧の妨げ
• 不動産価値の低下

これらのリスクを解消するために、相続登記の義務化は不可欠な施策とされました。

義務化による影響とメリット

所有権の明確化

登記を行うことで、不動産の所有者が明確になり、売却や賃貸、担保設定がスムーズになります。

不動産市場の活性化

流通性が高まり、空き家や遊休地の利活用が進む可能性があります。

地方創生や都市開発への寄与

相続登記が整備されることで、地域活性化プロジェクトや再開発が推進されやすくなります。

法的リスクの軽減

将来的な権利関係の争いを回避し、相続人間のトラブル防止につながります。

義務化による課題と注意点

費用と手間の増加

• 登記費用や専門家報酬（司法書士等）が発生
• 戸籍収集や遺産分割協議など、手続きが煩雑

放置していた場合の過料リスク

長期間放置していた不動産についても、過去に遡って義務化の対象となるため注意が必要です。

相続人不明・多数の場合

相続人が多数いる場合や、行方不明者がいる場合は、手続きがさらに複雑化します。

不動産投資家や一般市民が取るべき対応策

早めの相続登記手続き

相続発生時は速やかに登記手続きを進めることが重要です。

家族間での情報共有

相続人同士で不動産の管理・方針について話し合いを行い、円滑な手続きを目指しましょう。

専門家への相談

司法書士や行政書士、不動産会社に相談することで、スムーズな手続きを実現できます。

定期的な資産の見直し

相続が発生する前に、定期的に資産状況を確認し、遺言書や家族信託の活用も検討しましょう。

まとめ

相続登記の義務化は、これまで見過ごされがちだった不動産の権利関係を明確にし、社会全体の利益に資する大きな改革です。一方で、手続きの煩雑さや費用負担といった課題も存在します。

不動産を所有している方、相続の可能性がある方は、早めの行動が将来の安心につながります。この新制度をきっかけに、ご自身の不動産や資産の見直しを行い、適切な対応を進めていきましょう。

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